ユーザーを24時間監視するアプリ「釘釘」
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文/中国の大法弟子:清遠

 【明慧日本2020年10月1日】楊さんは大手企業で販売管理の仕事をしています。毎日、複数のスーパーを回って在庫確認をすることが彼の日課です。会社の指示でアリババ社が開発した「釘釘(DingTalk)」というアプリを携帯電話にダウンロードしてから、「私は24時間つねに監視されているようです」(中国語の「釘」には「監視する」の意味がある)と楊さんは言いました。アリババは中国大手の情報技術会社です。

 彼が毎日何時に家を出たのか、何時にどのスーパーに着いたのか、どのくらいの時間そこにいたのか、または何を話したのかまで、彼の上司は全部知ることができます。「釘釘」のGPS位置情報システムが彼の動きを報告できるからです。入社した当初、楊さんは携帯電話のGPS機能を24時間開通するようにと要求されました。スーパー回りをする従業員が仕事時間をさぼることを上司はもう心配する必要がありません。以前、従業員は本当は行っていないのにどこどこに行ったと嘘を言っても、上司は監督のしようがなかったのですが、今、携帯電話の持ち主が目的地から何メートル離れているかまで、「釘釘」は上司に報告しています。

 「釘釘」を使用するには、実名でダウンロードする必要があるほか、起動させる時に顔認識も必要とします。仕事を続けるため、それぐらいは我慢しますが、思いもよらないことに、「釘釘」は携帯電話の連絡先を自動的に読み取ることができ、その後、それらの連絡先の相手に「釘釘」というソフトを推薦します。いとも簡単で恐ろしい機能です。

 上記はまだ最もひどいことではありません。楊さんにとって最も不快なのは、「釘釘」の自動連絡の機能です。それは「釘釘」の最も誇れる機能でもあります。例えば、上司が楊さんに連絡して、彼が返事をしなかった場合、「釘釘」は自動的に楊さんにショートメッセージを送信して、また返事がない場合、「釘釘」は自動的に楊さんに電話を掛けます。しかも、定時の後もこの機能が使用できるように設定されています。

 楊さんの前の会社では、仕事はWeChat(ウィーチャット)で連絡し合っていました。従業員は自分の携帯電話にオフ時間を設定することができます。つまり、オフ時間(定時後と休日)に仕事についてのメッセージを受信しない設定です。今、「釘釘」はWeChatよりも従業員をコントロールしています。身辺に24時間体制の監視ツールを置いていると同然ではありませんか!

 「釘釘」は学校でも活躍しています。楊さんの甥の学校はウイルスが流行った時期にオンラインで授業をしました。先生は「釘釘」を通じて授業をして、生徒は「釘釘」で宿題を書いてオンラインで先生に送信します。アリババ社は「釘釘」に「デジタル学校」を構築する目標を立てています。

 新型コロナウイルスの流行期間に「釘釘」は急成長し、毎日のダウンロード数はWeChatも超え、今はなんと3億人のユーザーを持っています。中国ではWeChatは中国人の財布、読書ソフト、ビデオプレーヤー、カーナビ、育児知識交流のチャンネル、スポーツ万歩計......の役割となっていますが、「釘釘」は企業、銀行、学校のタイムカード、財務申請アプリ、会議プラットフォーム、契約書審査プラットフォーム......になっています。

 5、6年前には、WeChatはそれほど普及していなくて、通信の主な手段はやはり電話でした。電話事業者は個人の通話記録を政府に提供しておらず、公安局は誰かを調査する時、令状を持って電話会社に情報提供を要求することもできますが、調べられる範囲はその時のその案件に限られています。しかし、WeChat時代に入ってからは、WeChat上の情報は公安局に完全に公開されており、公安局はその情報に基づいてWeChatユーザーの「プロファイリング」をすぐに完成できます。ここでいう情報とは、主に当ユーザーの交友状況であり、どのチャットグループに入っているのか、誰と連絡しているのか、連絡の頻度、相手の詳細情報、共通の話題、などなどすべて公安局に把握されています。

 中国の防犯カメラ数は世界の半分を占め、WeChatのユーザーは10億人にも及びました。WeChat上の個人情報は公安局に監視されていることをみんな知っていますが、仕事や生活ともにWeChatに縛られているので、なかなか離れられないのが現状です。中国共産党当局は、国民のWeChatに対する依存、企業の「釘釘」に対する依存、公務員の「学習強国」というソフト(これもアリババ社が開発したもの)に対する依存を利用して、リアルタイムな監視を実施しているのです。

 これらのSNSを開発した情報技術企業は中国政府の管理下に置かれ、ユーザー情報の安全を保つことができません。一方、アメリカではアップル社が政府にユーザー情報の提供を拒否しましたが、裁判で勝ちました。中国ではそれが可能なのでしょうか?

 中国では、プライバシーもセキュリティもなく、誰もが透明人間のようです。今、指紋だけでなく、声を認識するための声紋技術も顔認証もあって、出かける時にスマホを外に持ち出さなくても顔認証や防犯カメラによって、あなたの行動パターンは把握されています。西側諸国では技術は人間の役に立つために発展していますが、中国共産党が運営する警察国家では、技術は人間を監視するための武器になっています。

 科学技術は中国共産党が人民を監視するための武器になっている

 また、利用者情報を売ることもできる時代には、個人情報の売買にまつわるビジネスも盛んになっており、公安局の「ネット検閲警察」でさえも、日常に触れる国民の個人情報を売っています。例えば、顧客の買い物習慣などはとても価値の高い情報であって、「ネット検閲警察」はその情報を毎日のように見ることができ、自由自在にそれを売って金儲けができます。「それは暴利で儲けられることです。私の知っている地方出身の若い『ネット検閲警察』2人が、就職してわずか2年間で車も家も買ったのです」と、公安局の内部情報を知っている関係者が証言している通りです。

 
(中国語:http://www.minghui.org/mh/articles/2020/8/15/410510.html)
 
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